修正テープ開発秘話

鉛筆からワープロ、パソコンへ。新しい時代の「消す」道具として登場した修正テープ。世界で最初に修正テープを考案・開発し、世の中に送り出したのも私たちパイオニアメーカーSEEDです。

デジタル時代のいま、消しゴムに代わる「消す道具」としてこれからもシードは新しい形を作り続けてまいります。

ケシワード展覧会
ペーパーレス時代への挑戦

企業のオフィスではOA 化(オフィスオートメーション)が進み、コピーやファクシミリ、ワープロといった機器の登場から「将来はペーパーレスの時代になる」と言われた。文具メーカーにとって、ペーパーレス化の波は企業の存続も左右する一大事。消しゴムの未来も大いに危ぶまれた。

そうした時代の転換期に登場したのが修正液であり、OA 機器の印刷文字やボールペン字の修正ニーズの増加とともに新たな市場を形成したことがきっかけとなった。

世界初の修正用具開発を



めざして

修正液の登場を機に、シードゴム工業も1982(昭和57)年9月に修正液の生産を開始する。ところが、後発ということもあって、シード製品はほとんど売れることはなかった。

修正液の失敗で再認識したのは「大手メーカーのような販売力がないシードの製品は新規性がなければ売れない」という事実だった。それならば独自製品を開発して、「修正液の失敗を見返してやりたい」という想いからスタートしたのが、世界初の修正用具開発プロジェクトである。

シード開発の修正液

修正液の弱点とは

まず着目したのは、修正液の弱点だった。当時の修正液は塗布後の乾きが遅く、修正後も表面が凸凹になり字が書きにくい。また、臭いがきつく、服に液がつくと落ちにくく、さらには最後まで使えないという無駄もある。

これらの弱点を、どう克服するのか。考えついたのは、乾いた膜状のものを、消しゴム本体への印刷時に利用していた転写技術を使って紙に貼りつけるというものであった。

修正液の弱点とは

カセットテープに



日の目をみる

1983(昭和58)年のことだった。このアイデアをもとに、カセットテープの構造に着想を得て、コイル状のテープが繰り出されて転写ヘッドを通り、もう一つのリールに巻き取っていく修正テープの基本構造が考案された。

そして、商品化への確信を得ると、シードゴム工業は1984年7月、この極めて本質的な構造で基本特許を出願。これは1993年5月に特許権が成立した。

商品の基本アイデアができても、その実用化は一筋縄ではなかった。最大の課題は、紙に転写しやすく、かつテープ状の時にははがれないフィルムの開発であった。

こうして世界初の修正テープは、最初のアイデアから約5年の歳月を経て商品化された。

修正テープのプロトタイプ

ケシワードポスター

1989(平成元)年9月、シードゴム工業は世界で初めての修正テープ「ケシワード」を開発した。
ただ、修正テープを縦に引きながら手動でテープを巻き取る初代モデルは、使いづらさもあった。

このため、1991 年9月には自動でテープを巻き取る横引き式の「ケシワードⅡ」を開発。これは、文具・紙製品やオフィス用品が一堂に会するアジア最大級の商談会「国際文具・紙製品展1991(通商:ISOT)」で発表され、好評を博した。

文字を書くように修正テープを引くことができる横引きの革新性は、国内のみならず海外市場でも大絶賛され、修正テープの人気に火をつけることになる。

販促キャンペーン

世界初の修正テープを知る人は誰もいない。広く認知してもらうには、実際に手にとって試してもらうのが一番であり、文具業界では異例とも言えるキャンペーンガールを起用した街頭でのサンプリングを行うなど積極的な販促キャンペーンを行った。こうした大々的な販促キャンペーンはシードゴム工業始まって以来のことだった。

その結果、文字を消す新たな道具として消費者に受け入れられ、大ヒットを記録。同時に、その機能性と魅力的なデザインも注目され、「ケシワードⅡ」は1993 年にグッドデザイン賞を受賞。

修正テープが他にはない新たな修正具として広く認知され始めると、国内外のメーカーからは基本特許の使用許諾を求める声が多く寄せられた。

この結果、シードゴム工業は世界13ヶ国で特許権を取得するに至り、修正テープはライセンス契約のもと世界中で生産され、急速に普及していった。